地域で歩きながら計画する
今回は、HeritageArrowとしての活動が勉強会だけに限っていないことを紹介します。全体として、私は新しい活動を始める際、「計画を立ててから動く」のではなく「動きながら方向性を見つける」というアプローチをお勧めしています。この活動が誰かのヒントになればと思います。
和歌山に戻って、まず歩き始めた
2025年3月、私は専門職大学院を修了した後、和歌山に主拠点を移しました。大学院では技術経営を学んでいて、私はその中で自分の知識と経験を棚卸しし、これからの活動の方向性を研究・整理していました。その検討の結果の一つが、和歌山へ拠点を移すことでした。
自分の中に様々な想いがあり、やってみたい活動はありました。 先日、記事で紹介した勉強会活動はその一つです。ただ、それだけで自分の目的が達成されるとも考えていませんでした。そもそも具体的にどう動くとその想いが実現できるかは、実際に現地で過ごしてみないとわからないと思っていました。
リアルワールドRPG
私の活動を振り返ると、現実をRPGに近い感覚で動いていたことに気づきます。私は人に聞いた情報をもとに、次の行き先を決めました。また、その行った先で出会った人と話をして、新しい情報を得ていました。その情報をもとに、次の行き先を考えて進んでいました。これを繰り返していました。
たとえば、コワーキングスペースで出会った方から創業支援施設の話を聞き、そこに行ってみました。創業支援施設のセミナーで知り合った方から、地域の商工会の話を聞き、相談に行ってみました。商工会で紹介された方と話す中で、また新しい視点が得られて次の行動につながりました。
全体として、計画を立ててから動いたのではなく、一つの出会いが次の出会いにつながり、行動範囲が広がっていきました。
カーシェアと自家用車
以前の私は、東京に住みながら遠方の故郷に何かできないかと考えていました。その当時は、インターネットで公開データを調べたり、年に数回帰省して知り合いと話をしたりしていました。でも、遠方からできることには明確な限界があると感じていました。しかし、それをうまく説明できませんでした。
和歌山に拠点を移してみて、その差を言葉にする説明が一つ見つかりました。その差は、カーシェアと自家用車に近いと感じています。これがどういう話なのか、を説明します。
カーシェアの場合、一つひとつの行き先に対して、お金を考えます。その行き先や目的に対して、お金が割に合うのか、ということを考えがちです。いく必要があるだろうか?もっと別の方法がないだろうか?ということは毎回頭をよぎります。そもそも、車を予約して借りるのは少々手間がかかります。
自家用車がある場合、時間が空けば「ちょっと行ってみるか」で動けます。車を借りる必要はないし、自分の時間だけがあけば動けます。厳密に言えば、ガソリン代はかかりますし、車の維持費もかかっているのですが、自由度に対して事前にお金を払っている感覚であり、行き先や目的に対してお金を払っている感覚ではありません。
同じように和歌山に拠点があると、「ちょっと寄ってみるか」で商工会に行けたり、「今日は時間があるから」で馴染みの喫茶店に立ち寄れました。コワーキングスペースのイベントにも気軽に顔を出せました。これらの一つひとつは小さなアクションですが、それが積み重なると、遠方に住んでいると知ることができないことを知れたり、出会えなかった人たちと出会えます。遠方から来ていると、時間を無駄にしないように予定を結構考えて動きますよね。でも近所ならそこまで予定を詰めなくても動けます。
色んな視点で状況を考えていく
私の和歌山での活動は、勉強会の開催だけではありませんでした。その他にも地域の状況を知り、考えるために動いていました。以下にその例を記載します。
- コワーキングスペース
- 例えば、普段、勉強会の会場として使わせてもらっています。それだけでなく、そこに集まる人との日常的な会話をして、地域のIT事情を知ることもあります。
- コワーキングスペースも一つだけでなく、複数の場所に参加していきます。
- 創業支援施設
- 紀陽銀行が設けたKeySiteという施設があります。そのセミナーに定期参加していました。その中で、ローカルゼブラ企業向けの取り組みを通じて、地域の事業者を知りました。
- 商工会・役所
- 他にも商工会経由で地域の中小企業を直接支援する仕組みを模索していきました。
- 行政側の視点から地域課題を理解する機会にもなっていきました。
- 地域の喫茶店
- 役所や商工会から地域のハブになっている喫茶店を聞いきました。
- オーナーが地域のハブのような方で、雑談の中から地域の温度感を知りました。
- また、私の活動方針の壁打ち相手にもなってくれました。
- 市民ワークショップ
- 住んでいる市で開催された長期総合計画に向けた未来共創ワークショップに参加しました。
- 大学院に通っていた際に市の課題をデータから分析していたのですが、ここではワークショップを通して住んでいる立場・視点から地域課題について話をしていきました。
これらの接点はそれぞれ独立しているようで、繋がっています。ある場所で聞いた話が別の場所で活きたり、ある人に紹介してもらった人がまた別の場所で活動していたり。ある一つの事実が別の場所から見れば、違った意味に見えていきます。
1年かけて方針の輪郭が見えた
2025年3月に和歌山に戻り、約1年が経ちました。
この1年でさまざまな方と話をし、さまざまな場所に顔を出しました。自分の活動を少しずつ調整してきました。その結果、「こうやっていくのがいいんじゃないかな」という方針の輪郭が見えてきました。
先日、地域の喫茶店のオーナーにその方針を話してみたところ、「おそらく、それは正解だと思います」という反応が返ってきました。地域のことをよく知っている方から見ても、違和感のない方向に着地できたのだと思います。その話は自分なりの一つの結論になっていると思います。
この方針は、最初から計画していたものではありません。動きながら、人と話しながら、少しずつ形になっていったものです。
おわりに
地方で新しい活動を始めるとき、完璧な計画を立てることはできません。現地の事情は、外から調べるだけではわからないことが多々あります。また、外の人間が相談もせずに勝手に決めた計画は誰の協力も得られないでしょう。
だからこそ、まず現地に行き、人と話し、歩き始める。自分で汗をかき、一つの情報から次の行き先を見つけ、少しずつ地図を埋めていきます。私はこのようなアプローチが好きです。このアプローチが私には合っていました。
私たちのミッションも遠くから計画を立てるのではなく、現場で手を動かしながら形にしていきたいと思います。
この記事は、筆者のブログ記事「最近の私の和歌山での活動に関する話(2025年7月)」(2025年7月公開)および「2026年2月の最近の活動と遊び」(2026年2月公開)をもとに、KnowledgeHub向けに再構成したものです。